臨床検査技師のタスク・シフト/シェアとは?実際の臨床現場では活かされている?#12
こんにちは、臨床検査技師・医療ライターのサユコです。
今日も検査に育児に奮闘しています!
今回の記事では、臨床検査技師のタスク・シフト/シェアについて取り上げます。
皆さんの職場ではどうでしょうか?
業務に影響がありましたか?
そもそもタスク・シフト/シェアとは?
タスク・シフト/シェアとは、医師の業務の一部を他の業種に移管することを言います。
医師の働き方改革の一環として、労働時間の短縮のために導入が決まり、令和3年5月21日、「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」が成立しました。(長い名前ですね…)
臨床検査技師においては、平成26年の検体採取業務、生理学的検査2種の追加に加えて実施可能な業務が増えることになります。
臨床検査技師に関わるタスク・シフト/シェア
ここで、法改正によって追加された業務をおさらいしましょう。
(参考元 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会:https://www.jamt.or.jp/task-shifting/law/)
①臨床検査技師が実施可能な検体採取の追加
ア)医療用吸引器を用いて鼻腔、口腔又は気管カニューレから喀痰を採取する行為
イ)内視鏡用生検鉗子を用いて消化管の病変部位の組織の一部を採取する行為
②臨床検査技師が実施可能な生理学的検査の追加
ア)運動誘発電位検査
イ)体性感覚誘発電位検査
ウ)持続皮下グルコース検査
エ)直腸肛門機能検査
③臨床検査技師の業務として、採血、検体採取又は生理学的検査に関連する行為の追加
ア)採血を行う際に静脈路を確保し、当該静脈路に接続されたチューブにヘパリン加生理食塩水を充填する行為
イ)採血を行う際に静脈路を確保し、当該静脈路に点滴装置を接続する行為(電解質輸液の点滴を実施するためのものに限る。)
ウ)採血を行う際に静脈路を確保し、当該静脈路に血液成分採血装置を接続する行為、当該血液成分採血装置を操作する行為並びに当該血液成分採血装置の操作が終了した後に抜針及び止血を行う行為
エ)超音波検査のために静脈路に造影剤注入装置を接続する行為、造影剤を投与するために当該造影剤注入装置を操作する行為並びに当該造影剤の投与が終了した後に抜針及び止血を行う行為(静脈路に造影剤注入装置を接続するために静脈路を確保する行為についても、「静脈路に造影剤注入装置を接続する行為」に含まれる。)
以上の10項目が新たな実施可能業務として追加されました。
現行制度の下で臨床検査技師へのタスク・シフト/シェアが可能とされる業務
「現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について」が厚生労働省医政局長から発出されました。
この中でも臨床検査技師が可能な業務が14挙げられており、特に臨床検査技師を積極的に活用するとされたもの、タスク・シフト/シェアの検討会で特に推進するとされたものがあります。
(参考元 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会:https://www.jamt.or.jp/task-shifting/promotion/)
①心臓・血管カテーテル検査、治療における直接侵襲を伴わない検査装置の操作
②負荷心電図検査等における生体情報モニターの血圧や酸素飽和度などの確認
③持続陽圧呼吸療法導入の際の陽圧の適正域の測定
④生理学的検査を実施する際の口腔内からの喀痰等の吸引
⑤検査にかかる薬剤を準備して、患者に服用してもらう行為
⑥病棟・外来における採血業務
⑦血液製剤の洗浄・分割、血液細胞(幹細胞等)・胚細胞に関する操作
⑧輸血に関する定型的な事項や補足的な説明と同意書の受領
⑨救急救命処置の場における補助行為の実施
⑩細胞診や超音波検査等の検査所見の記載
⑪生検材料標本、特殊染色標本、免疫染色標本等の所見の報告書の作成
⑫病理診断における手術検体等の切り出し
⑬画像解析システムの操作等
⑭病理解剖
これらの業務は指定講習会を受けずに実施可能ですが、指定講習会が必要なものと比べると、あまり大々的に話が広まっていないように思えます。
皆さんはご存じでしたか?
⑥⑩⑫など、すでに臨床検査技師が担当している施設が多いと思われる項目もありますね。
指定講習会の受講が必要
タスク・シフト/シェアで追加された業務は、令和6年4月1日前に臨床検査技師免許を取得した場合、厚生労働大臣が指定する研修、つまり一般社団法人日本臨床衛生検査技師会が実施する講習会を受けなければ行ってはいけません。
講習会はオンデマンドで700分の基礎講習と360分の実技講習で構成されています。
令和5年6月5日時点での修了率は、日臨技の会員で19.6%となっています。
(参考:https://www.jamt.or.jp/task-shifting/files/docs/885a5b9b173968a46bdae70d3332a81cda4692a2.pdf)
非会員も加味すると、まだまだこれから…といったところでしょうか。
コロナ禍だったということもあり、なかなか講習会に参加できなかった方もいらっしゃると思われます。
実際の現場ではどうなるか…?
タスク・シフト/シェアで追加される業務を新たに担当するかどうか、勤務している施設によって変わってきそうです。
例えば健診センターでは元々検体採取を行わないですし(尿・便くらいならあり得ますが)、追加された生理学的検査も健診項目にはありません。
指定講習会を受講しても活かしきれないのではないかと考えます。
逆に、スタッフの数が少数精鋭の傾向にあるクリニックの場合、診療科によっては業務の幅が広がると喜ばれるかもしれません。
具体的には内視鏡やエコーを行う消化器内科、カテーテル治療を行う循環器内科などが思いつきます。
ただ、日本臨床衛生検査技師会は
「当該行為の現場での実施の如何に関わらず、国家資格への業務追加であるため、既に資格を有しているすべての臨床検査技師の修了が望まれますので、もれなく受講されますようにします。」
とのメッセージを発しています。
「自分に直接関係ないから受けなくていいや」と思わないでね、ということでしょう。
実際に追加された業務を担当しているの?
講習会を修了して晴れて追加業務が実施可能となったとしても、どの程度の人が実務として担当するのでしょうか。
日臨技が行った調査で、臨床現場での実情のアンケート集計結果があります。
(参考 モダンメディア:https://www.eiken.co.jp/uploads/modern_media/literature/202301_69_P1-24.pdf)
内視鏡介助の際の組織採取や、比較的頻度が高めの生理学的検査は実施している施設が出てきていますが、他の検査はごくわずかという結果でした(元々の検査の実施件数が少なそうなものもあります)。
担当業務を増やしたいと思った場合でも、検査部の一存だけでは決められないですよね。
元々担当していた部署との連携も必要になりますし、講習会を受講しただけでは実際の業務に取り入れるに至りません。
講習会の修了率もまだまだこれから…という部分は否めないので、今後に期待が望まれます。
「ほかの施設はどうしているの?」
「うちの病院でも業務が増えることになったんだけど、どうやって運用を開始しようかな」…など、
タスク・シフト/シェアで臨床検査技師仲間に話を聞いてみたい方は、ぜひオンラインサロンで話を聞いてみてください。
色々な施設・立場で働いている方の話が聞けて、非常に参考になりますよ。
(くまのこ検査技師塾オンラインサロン)
この記事を書いている筆者自身は、まだ指定講習会を受講していません。
今の仕事では携わらないこと、育児中で中々時間が取れないこと(おまけで費用が高額なこと…)から、ついつい後回しになってしまっています。
しかし、このまま未修了にしておくわけにはいかないと思っています。
この記事を執筆するうちに、そろそろ重い腰をあげようかと思い始めました。
この記事を読んで下さった方で講習会を未修了の方、一緒に講習会を受講しませんか?
一児の母。
大学の検査技術学専攻を卒業した後、大学病院→個人クリニック→健診施設と勤務。
現在は検査技師かつ医療系ライターとして、フリーで働いています。
超音波検査士(健診領域)を取得したものの、まだまだ勉強中。