インシデントに直面したらどうする?適切な対応で今後に活かそう#19

くまのこ検査技師塾ブログの宣伝です。

こんにちは、臨床検査技師兼ライターのサユコです

今回は「インシデント」について考えてみました。

医療職である以上、業務内容は常に命と隣り合わせと言える臨床検査技師。

インシデントは出来る限り回避したいし、起こしたい人はいないでしょう。

しかし、人間の行動に絶対はあり得ません。

インシデントの要因や、当事者となった場合の適切な対応について今一度振り返ってみましょう。

目次

インシデントとは

インシデントは日本語で直訳すると「事件、事例、事案」などの意味を持ちます。

「何らかの問題が発生して事故(アクシデント)になる手前の状況」であり、様々な分野で使われている言葉です。

「ヒヤリハット」という呼び方をしているところもあるかもしれません(厳密には意味が異なるようですが)。

厚生労働省によると、
医療におけるインシデントは「日常診療の場で、誤った医療行為などが患者に実施される前に発見されたもの、 あるいは、誤った医療行為などが実施 されたが、結果として患者に影響を及ぼすに至らなかったもの」
とされています。(参考:https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/03/dl/s0324-15d2.pdf

インシデントを報告するのは当事者もしくは発見者で発生時には迅速に対応し、発生状況や対処法、結果を組織全体で共有するのが一般的です。

インシデントはなぜ起こる?

インシデントはヒューマンエラー、つまり人的要因と環境的な要因の2種に分かれます。

色々な分類がありますが、一例として見てみましょう。

インシデントの原因分類

ヒューマンエラーは、
「すべきことをしなかった」
「すべきではないことをした」
といった要因によって発生します。

不足:本来なら満たされているべき事柄が不足したために起こる。
経験不足、知識不足、技術不足、理解不足、認識不足など
不遵守:理解していたのにも関わらず、決まっている手順を守らなかった場合に起こる。
不注意:知識や技術は足りていたものの、注意散漫などで起こる。
疲労:多忙や労働時間過多による。不注意の背景に存在する場合がある。
錯覚:指示書の読み間違いなど
(欠陥:勤務態度が不適格で安全に業務が行えないが、改める様子がないなどこんな人は臨床検査技師にはいないだろうと思いますが…)

これらに加え、職場環境の悪さや決められた手順が不十分などの環境要因が考えられます。

しかし、これらの原因が全てクリアされているどんな明晰な状態であっても「100万回に1回はミスをする」という考え方(フェーズ理論)もあります。

「人間がやることに100%はない!」ということですね。

参考

名古屋品証研株式会社
ヒューマンエラーについての考察 第4回 - 名古屋品証研株式会社 ヒューマンエラー:(1)H/Eは組織の責任である。(2)トリプルチェックでは、ミスは防げない。(3)集中力は、高々50分しか続かない。
レジリエントメディカル より安全...
インシデントの原因と種類による対策と防止の方法 インシデントが起こる原因と種類を分類してわかりやすく解説しています。また、インシデントの発生を防止するための分析の方法と対策の立案の要点を図解を用いて簡潔に説明...

臨床検査技師とインシデント

医療職に関わらず、様々な職種でインシデントの管理が行われています。

臨床検査技師とインシデントについて、既存の報告からインシデントが発生しやすい条件をピックアップしてみました。

「テキストマイニングを用いた臨床検査部門における インシデント・アクシデントレポートの分析」
(参考:https://plaza.umin.ac.jp/j-jabs/41/41.236.pdf)では、

インシデントの発生原因について

勤務歴や配属年数に関わらず、確認を怠った
判断を誤った
知識不足だった
ベテラン(経験20年以上)では勤務状況多忙の状態だった

インシデントの発生条件について

部署配属5年未満で比較的多い
月曜日に少なく、金曜日に多い
といった報告がなされていました。

「チェック体制の不備が招いたもの、個人要因では知識不足、経験・技術不足が招いたものが大きい要因であり、疲れが蓄積しやすい週末に発生しやすい」ようです。

勤務歴や配属年数に関わらず「確認不足」はミスを招くことが記されていました。

また、
「検査室における再発インシデントの特徴」
(参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/68/1/68_18-23/_pdf/-char/ja

では、
繰り返して起こった同様のインシデントについて、

  • 発生したインシデントのうち、約4割が同様のインシデントの再発だった
  • 確認不足によるものが最も多く約7割だったが、対策はしばしば不十分になりやすいことが示唆される
  • システム運用変更などの環境の対策、技師自身に行動を促す対策は再発防止になる
  • ダブルチェックを過信してはならない

といった報告と考察が行われていました。

ここで具体的な事例を挙げることは避けますが、
検査前、検査中、検査後、検査業務以外の事務的な作業など…
改めて考えるとインシデントが起こる機会は多数あります。

発生するインシデントの内容については施設の規模や検査室の特性や年齢、人数などで左右されますが、自施設の対策を考える上でのヒントになりそうです。
ぜひ、全文読んでみて下さい。

臨床検査技師をはじめ、医療に関わるインシデントは患者さんの安全や治療方針などに影響を与えかねません。

今一度、気を引き締めて業務を行いたいものです。

一番大切!インシデントが起こった後の対応

勤務年数を重ねて振り返った時、誰しもインシデントの経験があるのではないでしょうか。

「やってしまった…」と目の前が真っ暗になる、血の気が引くような感覚に襲われた経験はありませんか?

細心の注意を払っても、残念ながら人間に「絶対」はありません。

インシデントが発生した時の適切な行動を今一度確認しましょう。

報告する

インシデントが発生したら、速やかに責任者に報告して指示を仰ぎます。

後からの報告は事態を悪化させる場合が多いので、出来る限り早く責任者に伝えます。

防止策を考え、実施する

インシデントの発生した状況や対応、原因、改善策などをまとめます。

報告用の書式が用意されている施設も多いのではないでしょうか。

報告後はインシデント内容を組織内で共有し、再発防止のための対策を実施します。

報告書の「対策」欄に「気を付ける」「落ち着いて業務にあたる」といったことが書かれていませんか?

起こったことを報告するので精一杯になり、対策まで気が回っていない状況かもしれません。

しかし、「人間に100%はない」のですから、ただ「気を付ける」では対策になりません。

  • もっとわかりやすい運用法にできないか?
  • 確認不足が起こらないようなシステムになっていたのか?

など、具体的な改善策を提案できるようにしたいものです。

仮に採用するのが難しい案だとしても、対策を考えることで問題点がはっきりして防ぎやすくなるのではないでしょうか。

インシデント報告は「反省文」ではありません。

漠然と「気をつける」よりも「○○時の○○について気をつける」とする方が、ポイントがはっきりして意識しやすいはずです。

自分のケアも忘れずに

対策を考えて実行するのと同じくらい大切なのは「自分の心のケア」です。

インシデント報告は「問題の再発防止」を目的に行うものですが、自分が当事者となった場合は多かれ少なかれ落ち込むものではないでしょうか。

「申し訳ない」
「同じことをしたらどうしよう」

といった気持ちを引きずってしまうことはありませんか?

反省はもちろん必要ですが、目の前の仕事に集中できず更なるミスを重ねやすくなってしまいます。

もし自分が当事者となって落ち込んでしまったら…

「起こってしまったことは仕方ない」と考えて、再発防止のための改善策を徹底する(インシデント報告を活用する)ことに注力しましょう。

そうはいっても、「次から気を付けよう!」と切り替えられる時ばかりではないですよね。
(筆者も引きずりがちです。)

反省することはもちろん必要ですが、自分の心のケアも忘れないようにしたいものです。

落ち込む時間を決めてとことん落ち込んだら、美味しいものを食べて、ゆっくりお風呂に入り、早めに寝るようにしましょう。

その後は気持ちを切り替えるように努力して、改善に努めます。

職場の人に相談する、話を聞いてもらうのもいいですね。

もしかしたら自分では思いつかないようなアドバイスがもらえるかもしれません。

もし「話を聞いてほしいけど身近に気軽に話せる人がいない…」という方は、
ぜひ「くまのこ検査技師塾で話してみて下さい。
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「自分の時はこうした」「こうして乗り越えた」と体験談が聞けるかもしれません。
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まとめ

残念ながら、インシデントは誰もが起こし得ます。

大切なのは、
「100%はあり得ない」
「どのように発生を防ぐか」
という意識を持って対策を講じることです。
時間をかけて作成されたインシデントレポートを最大限活用し、発生率を限りなく100%に近づけるように努力していきましょう。

著者:サユコ

一児の母。
大学の検査技術学専攻を卒業した後、大学病院→個人クリニック→健診施設と勤務。


現在は検査技師かつ医療系ライターとして、フリーで働いています。

超音波検査士(健診領域)を取得したものの、まだまだ勉強中。


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